ブラインドトークとVTS
- Keiko Kameda
- 2022年4月21日
- 読了時間: 4分

*雪舟:天橋立図(あまのはしだてず)
友人から、ブラインドトークとVTSを組み合わせたプログラムを実施してもらえないかと依頼を受けたのは2か月ほど前。職場の若手教育の一環としてのトライアルという位置づけ。
そもそも【ブラインドトーク】とは、どういうものかをご説明しましょう。
>ブラインドトークとは、目隠しをしたひとと、作品を見るひとの2人1組のペアをつくり、作品を見るひとが作品を鑑賞しながら、目隠しをしたひとに作品のことを言葉で伝えるというもの、とあります。
自分が目にしたものを、見ていない相手に伝えることは、やってみるとわかるのですが、なかなか難しいですね。目にしたものを言葉に変換し、色や形や位置関係など的確な情報として整理したうえで伝えなければなりません。それだけに、ブラインドトークでは「みる力」「言語化する力」「情報を整理する力」「伝える力」「聞き取る力」が身に付きます。さらにVTSを組み合わせることで、参加者のみる個性を相互に信頼しながら視野を拡げ、本質を掴み取る力をバージョンアップするきっかけを提供しようと考えました。
そこで、今回のプログラムは以下のような組み立てで行いました。*オンラインにて実施*
①ウォーミグアップ:
1つの画像みんなでみてもらい、何が見えるかを話してもらう。このステップでは参加者の「みて・伝える力」の現状を確認し、みることに関心を持ってもらうことが狙い。特になんのナビゲートも行わず、みたものを伝えてもらい、みた作品を紹介して終えます。今回はクスっと笑える作品をチョイス。
②ブラインドトーク:
参加者を2名1組に分け(ブレイクアウトルーム機能でチーム分け)、1人は作品をみながら、目にしているものを相手が理解できるように言葉で伝えます。聞き手はメモなど取りながら話し手が話し終わるまで最後まで聞き取ります。話し手が伝え終わったら不明点を質問します。これを2セット行い、2人ともが話し手・聞き手の両方を体験するようにします。このステップではみて伝えることの難しさを体感し、自分のみている範囲を認識し、より多角的にみるように促すことが目的です。
*使用作品1:雪舟天橋立図(あまのはしだてず) 使用作品2:ジョン・アムレーダー『大さじ』
③VTS: 参加者全員とナビゲーター1名で実施。1つの作品をみながらVTSのステップにそって進めます。
1.何がみえますか? 2.それはどこからそう思いましたか? 3.他に発見はありますか? 参加者のみる視点の違いによって自分のみえ方が変化したり、拡がるという経験を積み上げます。自分のみえているもの=意見として固執するのではなく、他者の言葉を自分の理解のプロセスのひとつとして取り入れ、それまでみえていなかった本質にみんなで辿り着く体験をします。他者の個性を尊び、自らも変容することを受け入れながらゴールをめざす楽しさを実感できます。
*使用作品:ビル・ヴィオラ『漂流』
今回、初めてブラインドトークとVTSを組み合わせたプログラムを実施しましたが、いろいろと学ぶことも多かったと感じます。【見る】【伝える】という行為の中に、みたものを「情報」として伝えるということと、「受けた印象」として伝えるということの両方があり、例えばブラインドトークでは、みた印象を伝えた方が相手にわかりやすいということを感じました。印象という主観的な要素と、情報という客観的な要素をどのように織り込んでいくのかということは今後も継続してみていきたいと思います。
また、ブラインドトークで「みたものを伝える」ということに重点を置きすぎると、VTSで作品に向き合った時に自身の感性を自由に開放して感じとることが、やや疎外されるように感じられました。正確にみて情報を得るという行為は客観性が強く、主観的にみるという行為を抑制するのかも知れません。この部分は今回初めて感じたことなので、今後も継続する中で確認していこうと思います。
もしブラインドトークやVTSを試してみたいという方がいらっしゃいましたら、ご連絡下さい。まだまだトライ期間中ですが、何かしらお役に立てるのでは(笑)と思います。
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