online VTS トライしてみました。
- Keiko Kameda
- 2020年9月13日
- 読了時間: 5分
更新日:2020年9月14日
参加しているアート維新で、オンラインサロンの運用を検討しています。
アート×ビジネスの視点で、時代に求められる人としての底力みたいな、
本質をとらえる嗅覚のようなスキルを、楽しみながら身につけて頂けるような
魅力的なコンテンツを提供していきたな、と考えています。
年内は、そのためのトライアル。仲間といろんなことを試しています。
その1つとして、VTS(美術鑑賞メソッド)をオンラインで実施するという挑戦もはじめました。
午後7:00。
参加メンバー4名は各々パソコンやタブレット、スマホなどでZoomへログイン。
今回鑑賞する作品は、事前に参加メンバーからもらったお題からセレクトしました。
頂いたお題は
①動きを予感させるモノとかヒトとか
②仮装
③もの派の作品
でした。結構、バラバラですね(笑)。
1作品目はビル・ビオラ(1951年~)の『The Raft』ラフト/漂流(2004年)の1断面を鑑賞しました。ビル・ビオラはビデオ・アートジャンルを代表するアーティストで、鑑賞したRaftもビデオ作品なのですが、その1カットを使いました。
民族も生活水準も異なる19名の人物たちがスタジオと思しき場所にたたずんでいる中、突然四方から大量の放水に襲われているというシーンです。
人それぞれの様相がそこには繰り広げられています。
メンバーからは「服装がバラバラ、時代も少し古い?」「後ろの人は両手を挙げて、まるで楽しんでいるようにみえる」「手前の人は倒されたのではなく、水があることを利用してサッカーのスライディングみたいにしたのかも?」「ヒッピーみたいな恰好をした人は首を少し前に倒して両腕を挙げている姿から、何かに抵抗しているようだ」「いやいや(ヒッピー風の人は)からだを張ってみんなの壁になっているのでは?」など、さまざまな視点での発見が重ねられました。
2作品目はベルナーレ・ビュッフェ(1928年~1999年)の『MON CIRQUE・ピエロ』 (1968年)のポスター画像を鑑賞。ビュッフェはパリに生まれ、黒い描線と抑制された色彩によって第二次世界大戦後の不安感や虚無感を表現する独特な世界観を持つ作家です。
メンバーからは「首もとにあたる部分に縦線や鱗みたいな線が描き込まれていて木の幹みたいで、人っぽくない」「眉毛や目が左右非対称・・・眉から鼻にかけてがト音記号みたい」「鼻や耳?みたいなところが赤いから、ピエロじゃないかな」「日付のような記載があったり、画面の端部が紙の折り返しのように見える・・・ぺらぺら?ポスターに描かれたものでは?」といったコメントが寄せられました。
3作品目は、もの派の作家・関根伸夫(1942年~2019年)の『空相-水』(1969年)が展示された写真を鑑賞しました。関根は1968年~1970年にかけて展開された「もの派」といわれる美術運動をリードした作家。「もの派」は、それまでの反芸術的傾向(斜め上の視点から芸術をシニカルに取り扱い、既存の枠組みから逸脱させてしまう芸術思想や運動を支持する態度のようなもの)に反撥し、石、木、紙、綿、パラフィンといった「もの」から芸術というもの原点を模索し、再創造しようとした芸術運動でした。
メンバーには作品タイトルや制作年は伏せて鑑賞してもらいますが、多かったコメントとして「バーチャル空間みたい」「合成された空間のようだ」というものがあがっていました。時代を超えて、精巧に研磨された石がかえって周囲の対比によって非現実感や違和感を生み出しているのが興味深く感じられました。メンバーのひとりは現在、VRを使った仮想展示を検討しているということもあるのか、そうした見え方が強調されるようでした。
オンラインでのVTSにトライしてみて、気づいたことがありました。
<気づき1:視点のパーソナル化>
作品鑑賞はZoomの資料共有機能を使い、通常のVTSと同様、気づいたことを作品の中の要素を根拠として示してもらいながら話してもらうようにしていました。ところが、メンバーは通常のVTSよりも「作品のどこ」という点をあまり話さなかったのです。違和感を覚えた私は、1つめの作品鑑賞を終えた後、理由を考えてみました。
本来、Zoomはオンライン会議のために使われるツールで、リモートワークなどでも積極的に活用されるようになっています。当然、資料共有は自分のパソコンからアクセスしているため、「自分がひとりでみている」感覚が優位だと思います。一方通常のVTSでは作品・もしくは作品が投影された1つのスクリーンをみんなで囲むようにみていくため「みんなでみている」という感覚が強くなるように思います。こうしたことと関係があるかどうかは明確にはわかりませんが、自分がみているものと相手がみているものが同一化される感覚が生じているように思いました。
これは、言い換えてみればオンライン会議で日々起きている注意ポイントのようにも思えました。共有している資料の中で、自分が伝えようとしている部分が相手にもきちんと伝わっているか、一度意識してみるとよいかも知れません。
<気づき2:沈黙の扱い方とテンポ感>
通常のVTSでは、作品をみながら静かに時間が過ぎていくことも豊かさになります。沈黙が苦痛ではなく、作品との対話が深まるプロセスとして感じられます。ところが、オンラインでは沈黙はあまり適さないようで、話していいのか、さっきの発言は間違っていたのか、といった不安につながりやすいようです。かといってひとりが長々と話すと集中力が途切れて、次の発言までに感じたこと、言いたいことが蒸発してしまうようでした。通常のVTSで訓練されたナビゲーターが長くなりがちな初期のVTS参加者のコメントを上手に追う通整理し、それが参加者全体の学びにもつながるという仕組みが出来ていますので、こうした部分をオンライン開催する際にどうしていけば良いのかは、今後の課題だと感じました。
これからもオンライン上でのVTSを実験しながら、魅力あるコンテンツへと磨いていこうと思います。
第2回目のオンラインVTSは2020年9月25日。
またレポートしようと思います。
お楽しみに。
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